煙か土か食い物 舞城王太郎  講談社ノベルズ



メフィスト賞の講談社ミステリー。
サンディエゴのERで働く奈津川四郎(六マタ)に「母親が連続主婦殴打事件の被害者となって重態」との連絡が届く。直ぐに福井県の奈津川家に舞い戻った四郎は独自に調査を開始し、罠を張る&復讐に乗り出す。暴力と虐待の奈津川家、十数年前に密室から失踪した兄・二郎の記憶が交錯していき・・・「密室?暗号?名探偵?くだらん、くたばれ!」(背表紙より)

評判通りまず目につくのはその独特の文体でして、興奮した人の思考を書き連ねたような文章は疾走感とパワーがあります。いつ休んでいいのかわからないので体力も使います。
よく紹介で言われるノワール調というのは知らないんですが、登場人物みんな福井弁、疾走感あるけど、かっこいいというよりは泥臭い。

で、かなりミステリをバカにしたところがあって、名探偵の登場も大した出来事ではなく四郎(主人公)もトリックとかそんなのどうでもよさげ。それよりもこれは、四郎を始めとする奈津川家の圧倒的な暴力と絆と暴力の話であります。
ミステリ部分はその語りの一要素という感じ。

四郎自体不眠症ということで語りも微妙に狂ってて、同じこと繰り返したり思考に微妙に整合性を欠いたりしてます。でも拘わってたらおいていかれるぞ!その間に奈津川一家は暴走して大変だ!圧倒的に語られる感動とカタルシス!



とかいってみたものの、、えと、現在この文書いてて微妙にやる気をなくしていて、なぜなら上のタイトルと作者名を検索したら私の書きたいこと&それ以上の文がゴロゴロしてるわけです。大人気だし、小説そのものがエネルギーあるんで、感想が通り一遍な感じになってしまうのは仕方ない気がして、しかも自分としては次の「暗闇の中で子供」のほうが好きだったりするので、どうしたらいいか困るのです。よって雰囲気を伝えるために一部引用して終了してしまいます。(え?)

>サンディエゴにはおよそ三百万人の市民が住んでいるが、そいつらがどういうわけだかいろんな怪我や病気を背負い込んでホッジ総合病院にやってくるから、ERにいる俺は馬車馬三等分ぐらいハードに働いてそいつらを決められたところに追いやる。チャッチャッチャッ。一丁上がり。チャッチャッチャもう一丁。やることもリズムも板前の仕事に似ている。まな板の食材を料理するときのチャッチャッチャッ。板前と違うのは奴らが切り開いたり切り刻んだりするだけのところを、俺達は最終的に全部元どうり縫い合わせてしまうというところだ。何かを一旦メチャクチャに傷つけてそれをまた元通りに戻すなんて作業をするのはこの世で外科医くらいのものじゃないか?多分そうだ。俺はこの仕事が好きだ。人の怪我を治せることが嬉しいんじゃない。忙しいからだ。俺は忙しく働いて手を動かしながら歩き回ったり走り回ったりするのが好きなのだ。俺は腕がいいからチャッチャッチャッと目の前の仕事をこなしている間にいくつか立て続けに命を助けることがあるので、そうなると自分が神になったような気がしてくる。この世の唯一神というわけじゃない。ギリシャ神話やローマ神話に登場するような大勢の神の一人だ。医療の神。治癒の守護神。どんな奴でもかかってこい。

(以上今後も改行ナシ。)




ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー 



うーん。もっと引用したい。




2003、三島賞受賞だって


A+



 
暗闇の中で子供   舞城王太郎  講談社ノベルズ


「だって僕チンたちのお家って最低最悪のわんぱくハウスだからね!」

舞城王太郎の奈津川家サーガ二作目にして現時点では終了作。とりあえず注意。冒頭で前作「煙か土か食い物」の犯人がばらされてしまうのと、純粋な意味でのミステリーではないです。
今作は奈津川家で一番の半端者、三郎が語り手の物語。昔文学新人賞、その後三文ミステリ小説家、「煙か土か」の事件後は小説も書けなくて現在無職の彼は、マネキンを次々と埋めていく少女ユリオを目撃する。甦る前回のあの事件の光景。事件はまだ終わっていない。三郎がダイブする新たなる地獄。

幻影が言う。「おめえら全員これからどんどん酷い目にあうんやぞ!」

相も変わらず主人公の思考が延々と述べられますがその破壊力は前作を上回ります。事件テンコ盛りなのにやっぱりミステリ的論理はどうでもよさげ、虚と実が入り乱れてさらなる救い様のない暴力。蹴った歯折れたなんてのはまだましなほう、無傷なんかいやしない!つーかロクな人がいない!(唯一善意の人・アテナさんも歯折られてるし!)見立て?トリック?密室?暗号?そう、そんなものよりもこの暗い熱狂と衝動と感動だ!

そして語り手は「推理小説家」三郎。信用ならない語り手です。事件も論理性も過剰にどうしようもないのに、加えてあからさまな齟齬、文中に示唆されるようにどうもこれは三郎の創作が加わってきてるんではないかとの疑いがでてきて、地の文も信じられないという事態に。

「煙か土か」は家族との物語なら今回は一対一の愛と三郎の生まれ変わりの物語・・・とはいっても安堵と焦燥と無価値な暴力のヘビーな繰り返し。
そして怒涛のラスト。
少し考えて、あれ、それでいいのか?とか、やっぱりダメなんじゃないか、とか、大きな落とし穴があるような気がしたり、です。

でも、なんと言おうがこれは安易な判断を拒絶する物語です。


十度くらい読み返して、事項を整理すると新しい事実が判明するかもしれない。でもそんなことはないような気もするし、あったとして、果たして意味があるのかも疑問です。。うーん。
続編あるかな?あるような気もするし、ここでプッツリ、な気もする。うわあ、そんなんばっかりだよ!


要約すると”読んでてクラクラ”。

とりあえず大きな矛盾としては橋本敬、それと四郎とBMW、ほかにもいろいろあるんだろうけど・・・ 気になる。


AA+



九十九十九 舞城王太郎  講談社ノベルズ


母親から生まれたばかりの十九はその美しさのあまり分娩室にいた全員を失神させて臍の緒で宙ぶらりん。彼の容貌はあらゆる人を悩ませ、ついには福井県西暁町に隔離されてしまう。そこでも美しさ故に地下室に閉じ込められることとなり、聖思流・聖理河の双子から美しさ故の虐待を加えられる。
そして起きる謎の残虐殺人事件、これを鮮やかに解決した十九は西暁町を離れ、放浪の旅に出ることにした・・・
が、次々届く「清涼院流水」の正体不明の小説、繰り返し登場する恋人と三つ子のイメージ。黙示録と創世記が同時進行する殺人事件。複数の自分。
次の章が前の章を取り込む多重入れ子の物語で、探偵神九十九十九は何を思う?


舞城王太郎による清涼院トリビュート、夢のコラボレーション(なのか)!の一冊。
九十九十九が主人公であるところの”正真正銘の舞城本”であります。

九十九十九といえば清涼院流水のJDCシリーズに登場する無敵探偵のことでして、情報が揃ったとたんに真相を理解するという必殺技”神通理気”/腰まで伸びた長い髪/美しすぎて顔を見た人は失神してしまう/だからいつもサングラスをかけている/顔が電波に乗ると視聴者バタバタ!/なんておよそ冗談としか思えない設定のキャラクター。でもそれも舞城王太郎の手にかかるとヘビーで殺伐で破壊的な物語となってしまうのであります。サングラス外してレーザーみたいに人をなぎ倒すぞ!!苗字加藤だし!レイプされてるし!氷姫宮幽弥、鴉城蒼司、霧香舞なんてのも一応でてくるよ!

えと、普通は気にしないであろう目次のことを言うだけでもネタばれになる気がして、相変わらず紹介が難しい。舞城ネタも散見してるし、清涼院のしょうもないところのオマージュやらパロディやらも見受けられるのですが、それはさておき、やっぱりエネルギーが凄まじい。「煙か土」「暗闇で」の怒涛の展開に微妙な線の細さを感じてたんですが、「九十九十九」ではその辺が上手くマッチしてるように思われます。残虐さも理屈もどうしようもない殺人てんこもり、そんなぐちゃぐちゃのなかで「うわ、こんなのありか」と謎が見えてきて、苦しいけど安堵もあって、切なくもなってしまうのでした。説明しようとすれば(ドラえもんは植物人間のノビタの空想でした)って言われた時の切なさとやるせなさ、といえばぴったりなんだろうけどネタバレなんで色消しします。十九、がんばってくれよ。

しかし参考図書が聖書と清涼院の「コズミック」「ジョーカー」「カーニバル三部作」だって。なんだそれ。。舞城本「煙か土か」「暗闇で」とあわせると間口狭いなあ。「コズミック」「ジョーカー」をくくりつけて撲殺、なんてネタあったけど、これじゃバリケードできそうだよ。。良い物だということは確実なんだけどね・・・・間口が埋まります。




※ほんと物語構造からしてアレなんで、あらすじとか書けないんだよ!ミステリのネタばれは嫌だし。
※「カーニバル」は読むにはそれなりの覚悟が必要です。開いただけで色物のオーラが。
※それにしても舞城本の装丁はどれもかっこいいね。




AA+


世界は密室で出来ている  舞城王太郎 講談社ノベルズ


隣の家の涼ちゃんが屋根から飛び降りて無残な死に方をしてから”僕”は高いところに登るのを止めてルンババは中学生にして名探偵になった。二人で行った修学旅行先の東京ではエキセントリックだけど美人のツバキとエノキの姉妹に出会って、僕の心の密室は崩れてしまう。
そして彼女達と共に事件もやってくる。僕とルンババを取り囲む死骸、密室、死骸、密室、死骸・・・・・・
そう、『世界は密室で出来ている』

 「煙か土か食い物」で、「くだらん、くたばれ!」と言われてしまった名探偵ルンババと”僕”の少年時代の青春エンタ、ってことで、アオくて、ホロ苦いです。そして、舞城作品ということで他にも違わず主人公の延々の語りの文体とタチの悪い冗談ギリギリの残虐殺人山盛りでした。
その、ルンババ少年達の感情は好奇心と息苦しさや焦りのないまぜで占められていて、でも、それを型どっていくのは密室だったり、過剰に弄ばれる死骸だったりするのです。
こういうのって、「くるぐる使い」や「ステーシー」の電波系の頃の大槻ケンヂとか、音楽だったらミッシェルガンエレファントの歌詞なんかが感覚近いと思うのだけど、例えにくいです。目眩をおこしながらも、全力でもがいて、でも同時にギャグなんかも言ってしまって泣き笑い、というような、そんな感情です。

「煙か土」「暗闇の中」のダークな世界と地続きなのに本当に青春してる。素敵なのでした。

量もほどほどだし、舞城入門としては丁度いいのではと思います。










AA+
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TITLE:今までのあらすじ http://purplemirror.fc2web.com
DATE:2003/05/31 00:19
URL:http://www.enpitu.ne.jp/usr6/62462/diary.html
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