西遊記 三 吉本直志郎・文 原ゆたか・絵 呉承恩・作 ポプラ社文庫 |
おもいっきり児童文庫の西遊記。でも三巻あるし、結構細かいところまでフォローしてる、しかもこれは小学生には無理だろ、ていう対象がよくわからない西遊記翻案本。
個人的には西遊記のエピソードに、封神演技にも出てくるナタクや托塔天皇(=李靖=毘沙門天=水滸伝の晁蓋のあだ名)とか玉兎(足洗邸)が登場するということで、そのへんの内容を知りたくて手にとった一冊。古本五十円。だって、完訳(岩波)を読むのゼッタイ辛そうだし。見合う教養ないし。シルクロード?
と思ってたら、これが結構よかった。 文章は訳っていうか自由に書いてるんだけど・・えーと、これだけとると平易なんだか滑ってんだかわからない有様なのですが・・・引用
(虫妖に)
>「悟空兄ィはやく術をたのむ。フマキラーとでも、バルサンとでも、キンチョールとでも呪文をとなえて、早くこいつらをおっぱらってくれ」
(天竺で)
>「見られよ!あちらの空に五色に光が射しておられる。あれをレンブラント光線などと軽く決めつけてはばちがあたる・・・
(゚Д゚)
オヤジギャク? つーかそれは誰に向けてるのんだ?レンブラント光線?なんて感じなんですが、原ゆたかの挿絵(見たことがあるはずの人です)が入るとあれ、不思議と楽しそうな有様になっております。 挿絵は、挿絵というか文章の背景画像となっておりまして、例えばお釈迦さまの台詞の背景にはお釈迦さまのポーズが描いてあったりして、上の余白やら角の白に、見開きの文章の中に所狭しとかわいらしい三蔵一行が動き回っているのであります。たのしい。 こういうのはなかなか例がないと思います。
滑ってる、といった文にしても、それは難解なものを平易にしようとの苦心の跡に違いないわけで、ときどきはっとさせられるようなところもあったり。例えば姫君に化けた玉兎(妖精、しかも非力)が孫悟空から逃げるシーンで
玉兎を
>「化け物、いたね。」 >「いたね、でもかわいい化け物だね」
なんて、妙にほほえましかったり。この場合、玉兎の挿絵はぜんぜんかわいくないのですけど。うーん。絵でも兎とともに逃げ回っております。
こんなかんじで、文と絵のコラボレーション、というかケミストリー、という言葉がしっくりくるように思われる、妙に楽しめた一品でございました。 成年向けの、こんなのないかな。スカしたのはありそうだけど。
しかし誰が対象なんだろう。こんな児童いたら嫌だ。(鉄拳)
関連リンク 西遊記(マンガ・曹洞宗(!)のページ) なんか紅亥児とかナタクもでてきたり。
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