■ 項羽と劉邦 全三巻 司馬遼太郎 新潮文庫(と、赤龍王)
ん、なんか本宮ひろ志の「赤龍王」に王離って全身黒甲冑のサイボーグみたいなヤツが項羽の仇役ででてくるんだけど、こんなのいたっけ?とか思ってつい読み返してみました。
いませんでした。
正確に言えばそういう人はいるんだけど(王センの息子だって)、本宮ひろ志のスーパーアレンジなのでした。
■ ぼっけえ、きょうてえ 岩井志麻子 角川ホラー文庫
岡山が舞台の和物・村落・暗澹・情念・幻影・短編集。ホラー、とまとめるのは、過ぎてるようでちょっと気が引けます。四つのうち三つが貧農の北岡山(一つは瀬戸内の漁村)、恐らく明治〜大正時代での話。子潰し、忌み場”ツキノワ”、虎列刺(コレラ)、村八分、といった土俗的な、嫌な慣習と貧困と、村の閉塞感と救いのなさ、緩やかな地獄。暗い情念とちらつく幻。
全然関係なくなるけど、そこから抜け出すには荷物まとめて東京まで徒歩で行くしかないだろう、そのあとどうなるか知らないけどね、重労働で足も腰も歪んじゃってるけどね、って。
自分としては救いと、新時代の息吹がほんの僅かにある「依って件の如し」が好き(それはそれは暗いものなのだけど)。
■ [レビウ]太陽黒点 山田風太郎 廣済堂文庫
山田風太郎の昭和三十年代が舞台のミステリ。ミステリと知らなかったら展開に戸惑うかもしれない。戦後十数年を経て、「戦争で若さを費やしてしまった」「そして技能も経験も何も残らなかった」世代と「安定期に将来が見えてしまった世代」の摩擦を軸に進む。現在とは「戦後」の位置付けは全く異なっているわけなんだけども、実際にここらの世代の問題はどこまで深刻だったのだろう?ミステリのスパイス程度に使っただけなんだろうか?その辺はちょっとわからないです。
あと、廣済堂文庫の裏のあらすじを書いたヒトは山風先生に消されても仕方がないと思う。最終章のネタバレのところまであらすじを書いてくれてます。廣済堂の裏表紙はもうスルーすることにするよ?