ジャンプで有名になったこの作品。中国三大伝奇だそうです。
作品の知名度については序文の内容が興味深いです。つまり、孔子の嫌う太公望の話なので儒家の手により辞書から抹殺された、と。そのおかげで外国一般には知られていない、と。。ただ、あちらでは「超」馴染み深くて、当の儒家たちも隠れて読んでたそうです。 つまり、向こうのローカル&メジャー神様がオールスター出演の伝奇物語というわけですね。
で、今更ながら紹介すると 舞台は殷王朝が周と入れ替わる易姓革命。 「封神計画」の遂行者として道士・姜子牙(後の太公望)とその仲間達が崑崙から次々と下山して、周軍とともに戦いに加わります。そこまでが長いけど。封神計画というのは仙界・人間界の再編とそれに伴う人員整理、というもので、その為には仙界・人界から選ばれた365人に死んでもらわなくてはなりません。 そして起きるべくして起きる殷と周との大戦争、乗じて勃発する仙界の二大派閥、闡教・截教の激突、そこで用いられるはビックリ超能力兵器「宝貝(パオペエ)」、おっさん、爺、婆、妖怪と少年、美女が入り乱れる超絶大バトル伝奇、てな感じです。ナタク七歳、雷震子も七歳、黄天化は中学生、ケ嬋玉は世界一の美少女で、太公望や聞仲は七十代。
とりあえず、ジャンプの藤崎封神演義は、まったくの別物です。噂じゃ聞いてたがこんな違ったとは。平家物語と源平討魔伝ぐらい違ったですよ。。。
中国伝奇で人物入り乱れる、とはいっても三国志や水滸伝とはだいぶ毛色が違います。なんだろう、もっと陰気で猥雑、ドロドロ、というべきか。 構成も、読み切り物のような、周軍に立ちはだかる今回の恐るべき怪人(じゃなくて仙道)はといった作り。その荒唐無稽な感覚は魁!男塾に近いかも。 四百人近い登場人物にしてもきっかり365人分封神されるわけでして、その様は凄惨です。子供にしろ美女にしろ容赦ありません。鳴り物入りで出てきたはずの人物がサクサク死んでいく感覚はいとあさまし、だれも甦らないキン肉マン、しかも尋常なくバランスが悪い。 しかも、どう読んでも太公望たち闡教に大義名分があるように思えない、強すぎ、むしろ悪役に見える、となかなか非道い話です。
ジャンプ藤崎版では無敵の聞仲や妲己にしても中ボスでしかないし、生命リストラの十絶陣(ひどい)とか、アメリカの爆撃の如き万仙陣、動物出身の妖怪仙人は正体を晒されて嘲られ、強敵は頼もしいゲストが呪い殺し、黄一家の全滅に代表される、殷側は降将だろうが子供だろうが、結局皆殺し、処刑法なんかロクなのがない、なんてところは、もう、なんというか、十八史略(陳舜臣)の後半の救いのない感じ、中華四千年の怨念を感じます。 チャイニーズダークネス。うわあ。
仙道たちはとても悟った人とは思えません。バトルに参加する理由が 「長生きしてると殺人欲がたまってくるのじゃ。いやしい妖怪仙人にはわからんじゃろ、殺させろ」(闡教オフィシャル) とかいうの。ちょっとお前、こっち来い!殴らせろ!
まあ、そんなこんなでも後半ではだいぶヒートアップしてきてこちらもマヒしてきてランナーズハイならぬ男塾一気読み状態・ハイになって来まして、派手に盛り上がります。唯一計画の邪魔に動く申公豹・黒点虎コンビや白鶴のおしゃべりなんかは一服の清涼剤といった感じで好きです。
スケール大きくてブラック、でゴージャス、闇鍋の如くいろいろぶち込んだけどかき混ぜない、荒削りなところがまた魅力・・・やはり中国は偉大です。
でも・・・
・・・・・・でも なんと言うおうが燃燈道人は大嫌い。上司にしたくない仙道ナンバーワン。態度でかい。部下殺す。でも味方。
rankAA
封神演義 全23巻 藤崎竜 集英社ジャンプコミックス |
こちらのタイトルのメジャーなほう。 改めて見ると感慨深い。
同じ「封神演義」で「安能版より」の断りがあるけど、巻末でメタ封神演義とのコメントがあるように、全くの別物。
殷VS周の戦争に乗じて封神計画が発動され、それが闡教・截教の激突を呼び、仙道と人間の入り乱れる宝貝合戦・・・なんて、大まかな筋「だけ」は一緒ですが殆どのエピソードが作り直されてます。あのバランス「激」悪の原作がここまで充実した少年マンガになってるとは・・・。しみじみします。 純粋な話としてはこっちのほうが好き。ビッグスケールの伝奇だもの、楽しいです。
原作の血も涙もない太公望元帥と違い、なるべく犠牲者を出さないよう奮闘しますし、(ありえないナリだけど)人間的に見えるし。 しかもそれが実を結んで、365人から相当人数が助かってるよね?多分。特に明示されてないけど。 まあ、原作太公望はピンチの比干ほっぽって逃げるしな!更に利用するしな!
さておき。
他にも強烈な個性を与えられた聞仲とか、悪女な妲己がはっちゃけ露出美女だったりとか張奎とか細かいとこ挙げてもきりがないんですが(鬼畜・燃燈もね!)、アレンジの随所に作者の人の良さがにじみ出てるように思われます。
原作チョイスの妙もあるんだろうなあ。とりあえずはファニーなビジュアルがナイス、 空気もナイス、安能版と併せると尚楽しめるかと思われます。 まー今更なんですけど、そういう楽しみ方をしました。
rank AA みるなら両方で+
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