■ [レビウ]蘆屋家の崩壊 津原泰水 集英社文庫
ファンになる。決めた。文章上手いなあ。
→いつも黒スーツのホラー作家「伯爵」と無職・猿渡の二人の豆腐好きが上手いものを食べに行ったりなんかしているうちに異形の世界に転げ落ちていく連作短編集。
って、まとめても全然面白そうに見えないよ。でも読後冷静にみてみるとこうなる。事実そうなんだから仕方ない。(ノД`)
表題作の「蘆屋家の崩壊」(・・・アッシャー家の崩壊)の空浜、「カルキノス」の苦悶の表情が浮かぶ甲羅を持つ紅蟹、「超鼠記」の鼠駆除業者etc・・・些細なところからたちまちのうちに非現実が襲ってきて去っていく。一応の説明はつけられるのですが、後に残る奇妙な余韻が切ないです。薄ら寒いのも。不条理と感傷の相性が良すぎです。
異形コレクションシリーズで何回か見たはずなんだけど、単品よりまとまってる方がどっぷり浸かれるし、「水牛群」の〆もあって全然いいです。
醒めた理知的な一人称は独特なリズムがあって、その中に微妙なリフレインがあったり、洒落っ気があったり、日本語ラッパーも無理な韻ふんでないでこういう文でも作って下さいとか思いました。関係ない。
〜ぬうちゃん。彼女から名告ったはずはない。俺が勝手にそう呼んだ。ぬうちゃんの、ぽってりとした紅色の唇。なにも喋らず、ただくるくると笑いかけてくる、葦のカーテンのむこう側から。薄薄はわかっていたのだ。だからあんなにも悲しかった。〜
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